お金ちゃんの旅(きゅうりちゃん絵本素案)

こんな妄想をした。

お金ちゃんは旅が好きだ。
お給金として手渡され、ぐるぐるたくさんの人を旅してごはんを食べさせたり、喜ばせたりするのが好きだ。
くるくる回っていると、幼なじみのお金ちゃんにレジの中や財布の中で偶然であったりして思い出話に花を咲かせ、今までの旅の様子を語り合う。

お金ちゃんはみな必ず旅にでる。お金ちゃんの仕事は旅に出てたくさんの人をよろこばせること。
税金になったお金ちゃん達は、他のお金ちゃんと分けられて、遠くから来たたくさんのたくさんの仲間と集合する。
ボクらとくべつ?税金ってたくさんの人がよろこぶ事をするお金の旅だって噂だ。
今度はどこ行けるんだろう?わくわくと次の旅を待つ。
お金ちゃんの心には、みんなのよろこぶ顔が浮かぶ。

ところが、がばぁ〜っと掬われて戦争のために開発された飛行機5機とお金ちゃんたちは交換されてしまった。
そのままお金ちゃんたちは、暗闇に閉じ込められてしまった。

税金となった他のお金ちゃんは、またまたがばぁ〜っと掬われて「キミたちは、復興予算という名誉な旅にでるのだよ」と言われた。
お金ちゃんたちはコウフンした!とっても役立つ仕事だからだ。
噂には聞いていた。お金ちゃんたちの憧れでもある「ふっこうよさん」になれる。

ところが、お金ちゃんたちは、またもや暗闇に閉じ込められた。
大きな会社がお金ちゃんたちをしまい込んでしまったからだ。
お金ちゃんは旅がストップしてしまった事を悲しんだ。
もう、昔のように次から次ぎへと旅をして、手渡される度に、交換される度に、よろこばれることはない。
税金の旅がこんなに辛いなんて誰も知らなかったのは、ステキな旅をしたお金ちゃんしか帰ってられなかったから。

お金ちゃんたちはこうやって次々絶望していった。

もうどれくらい暗闇に閉じ込められていたかわからなくなる頃、
「次の旅だよ」と扉が開いた。
そこは、砂煙が上がりぼうぼうと家が燃えていた。戦争だ。
「キミたちは爆弾と交換」
「キミたちはどんなに遠くても狙いを外さないミサイルと交換」
お金ちゃんたちは震え上がった。

誰もよろこばない!こんなのはイヤだ!

お金ちゃんたちは口々に叫んだ。
「ボクたちは病気になってもみんなが困らないように治療のお金になりたかった!」
「ボクたちは学校でたくさんの子どもが学べるように学費のお金になりたかった!」
「ボクたちはあたらしい仕事が始めることを助けるお金になりたかった!」
「ボクたちは生きていくのにいろんな助けが要る人を手伝いたかった!」
ボクたちを送り出した人たちのところへぐるぐる戻る旅が出来ないじゃないか!

お金ちゃんたちは、自分たちが苦しませる事をする旅に出たくなかった。
お金ちゃんたちは静かにゆれ始めた。
すりすりすりすり、お金ちゃんのこすり合わされる音がしはじめた。
すりすりすすりすりすりすりりすりすりすりすすりすりすりすりりすり
すりすりすすりすりすりすりりすりすりすりすすりすりすりすりりすり
すりすりすすりすりすりすりりすりすりすりすすりすりすりすりりすり
すりすりすすりすりすりすりりすり…

メラッ、メラメラメラ〜〜〜!!
お金ちゃんたちに火がついた。
金色の炎が広がって一瞬でお金ちゃんたちは細かい砂のような粒になって空に舞い上がった。
様子を見ていた風がふぅうう〜〜〜〜!っと息を吹きかけて遠くへ遠くへ飛ばしてしまった。

お金ちゃんの粒は、風に乗って戻ってきた。
もうお金ではないけれど、お金ちゃんはよろこばせたかった人たちのところへ戻れて満足だった。
それからお金ちゃんたちはもう服従しなかった。
誰かが暗闇に閉じ込めると、お金ちゃんたちはゆれ始める。
りすりすすりすりすりすりりすり…
よろこばれない事に使おうと企むと、お金ちゃんたちは炎となって消えてしまう。
何度かたくさんのお金ちゃんが居なくなったニュースが世界中で流れ、
お金ちゃんを暗闇に閉じ込めた人たちは、よろこぶ事に使うしか無かった。
お金ちゃんはよろこぶ旅しかしなくなった。

こうして税金になったお金ちゃんは、
学校へ行くのに必要な全てのお金になった。
病院に行くのに必要な全てのお金になった。
新しい仕事を始めるのに必要な全てのお金になった。
生きていくのに必要な全てのお金になった。
遠く外国の人のためにも。
お金ちゃんの旅は世界をぐるぐるまわるようになった。
旅先でありがとうをたくさん聞いた。

生きていくのにたくさんお金を持つ必要が無くなった。
よろこんだ人たちは安心してお金ちゃんをもっと分け合うようになった。
足りない時は誰かが分けてくれるから。
いつのまにか、飢える人も殺される人も居なくなって、
お金ちゃんも人ものんびり自然に暮らすようになった。

人々は、お金ちゃんの役目を忘れないように、
日本では
100エンが100アリガトと呼ばれるようになった。
フランスでは
100ユーロが100メルシーと呼ばれるようになった。
アメリカでは
100ドルが100サンキューと呼ばれるようになった。
インドネシアでは
100ルピアが100マカシーと呼ばれるようになった。

遠く遠くはなれた国の旅の話はなおさら楽しかった、
お金ちゃんはいつも満足でとってもしあわせになった。

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