ナメクジ月間に何をしたのか

カチンコチンだった心を解いて、元気になるはずだったらとても良くなっていくところと、逆に押さえていたお守りがなくなった井戸の蓋みたいに「ガタガタ!ガタガタガタ!」ってなんか出てこようとするわけよ。前からフッとした瞬間に井戸の蓋の隙間から「うわぁ〜〜〜!」って叫びたいような気持ちになることはあった。過去に押さえ込んだ気持ちだというのはわかってた。でも重りがなくなったから蓋が浮き上がって言葉か出てきたのだよ。なんと、「死ねばいいのに!」だと。

やばいやん?死んじゃいかんやら。だれの死を願うの、私。もうね、こんなふうだもの元気になれんやん?元気になろうとして中途半端に立ち上がったせいやん?井戸に何か閉じ込めてるのは。いっかい、自分のことをしっかり見てあげる気になったわけよ。

ナメクジ月間のルールは、いい人ぶらないこと。絶対だれにも咎められないなら言いたかった私の胸の内を、私こそ無条件に肯定して聞いてあげる。ここまでの道のり長かったんだけどやっと来たわ。うじうじジメジメとしたナメクジになる時が。

もうね、容赦なくやったね。悪いのはみんな相手よ。私は一切悪くないことにして、呪いまくったね。悲しかったこと、ショックだったこと、いちいち全部、細かくリストにしたね。「そりゃーすねるて!」「そりゃーなくて!」「そりゃーおこるわ!」全身で相槌打ったね。自分がかわいそうでわんわん泣いたわ。休み休み続けたね。

なんたって半世紀分あるやん?まあまあ苦労もあるもんでさ。で、人生で最高に黒いわけよ。心が。んでさ、当たり前やけどさ「人を恨むのは悪いこと」って自分で強く決めて来てるから、それやってると自分から毒が出ると思うんだわ。「だめぇ〜!わるいことよぉ〜!」って。すごい毒が出た。めっちゃ気持ち悪いけど、井戸の中の妖怪は井戸から出てどんどん成仏していくわけよ。

どすぐろいのにどす黒いのに、爽やかになっていくという謎な状態。そしてついに

熱が出たっちゅうの。ほんでも負けてはいけない。罵りまくる力を弱めんかった。「わたしはわるくない!」「わるいのはまわりでよのなかだ!」「わたしはがんばった!」「ものすごくよくやったぞ!」って。「なのに、なのに、かなしかったねー、がっかりしたねー。たすけてほしかったねー。」って。けっこう三週間ぐらい?やったね。しつこく。ひしたらさ、もうさ、飽きるわけ。めんどくさくなってくるわけ。まだ少し残っとるよーって言われても「ごめーん、もうめんどくさーい。お願いやで、ちょっと愉快に考えていかん?」って感じになってきたのよ。恨みつらみが爆笑に変わっていった。「もう、とろすぎてウケるわ」って自分にツッコミを入れられれば成仏の速度がどんどん増していく。やー、もう、ぜったいマンガにしよう。おもしろすぎる。

そうして、呪うような気持ちが成仏していくわけよ。とりあえず、私「死ねばいいのに」って言わなくなった。殺意が消えたわけよ。いいことやん。だから、ナメクジスーツ売るわけよ。これ着てる時はナメクジキャンペーン中で、ちょっと取扱注意だけど成仏していくわけ。ささくれた心が。

こうやって、お客様からの声とか届くわけよ。売れるね。ナメクジスーツ。ナメクジ御殿建つね。夢は膨らむわけ。ナメクジ物語なんかも考えちゃって。絵本一冊できる完璧なストーリーもできたもんね。ナメクジのおかげで世界は潤いを保ってたっていうオチさ。いいわけよ、ナメクジになったって。

ナメクジになることをいけないことだって嫌うと毒が出るんだよ。ナメクジを面白く扱って仲間になったら、毒はおいしいジュースになる。

みんなナメクジ心を持っている。隠しちゃいけない。押さえつけると妖怪になる。ナメクジは可愛がって成仏させる。呪いを成仏させられるようにポケットにナメクジを飼っておくのだよ。ナメクジのストックは切らしちゃなんねえ。

んで、なんか、さいきん、毎朝とても機嫌がいい。目が覚めたとたん機嫌がいいのは人生始まって以来やよ。

あなたのナメクジは元気ですか?

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