あかいつぶつぶの絵・原発事故から七年め

予定では、原発再稼働のことを考えてもらうためにあかいつぶつぶの絵で54基の原発を描こうと思っていたのです。
が、まだ一基も描いていません。

放射性物質の可視化した、あかいつぶつぶの絵をさらに描くこともしていません。
お知らせには、今あるもので賄えると思っています。
よりショッキングであれば、また広まるのかもしれませんが描こうとは思いませんでした。

今年の三月で6年が経ちました。
被曝をとことん避けたい人、許容値を見つけて選択していく人、様々な考えができてきました。
移住した人もいるし、とどまった人も、移住してみて戻っていった人もいます。東日本大震災を覚えていない、知らない子供たちが小学生になるほど月日が流れました。

いったいどこにどれだけの放射性物質があるのかさえもわからなかった当時の状況と今の状況は違ってきて、それぞれの選択に至る理由は様々です。選択のどれも賛同されなくても他者に妨げられるものではないと思います。

福島県では、二本松市の放射線副読本を先生方、専門家の方々と作ったので通っていろんな人と話しました。私が出会える人たちは、全体から見れば少しなのだとわかっています。その中で、感じ考えていることを隠さず聞かせてもらえるのはもっと少しです。

「相手の身になって考えなさい」そう教わり、もっと想像力を持てばもっと世の中はあたたかく支え合えるのにと思っていました。ところが、実際は複雑で難しかった。

想像力だけではわかりませんでした。想像力を持っても、膝を交えて聞いてみても「私には知ることができないものがある」と、当たり前のことに気がつきました。
私はあかいつぶつぶの絵を描いている柚木ミサトです。
自分の環境は偏っていくこともわかりました。

現場で聞かされる「解決したい辛いこと」「無理だと思うが叶えたい願い」、そして繰り返してはならないことに注目していきました。もちろん、見聞きしたものが全てではない。それなのに伝聞だけでわかるはずもありません。
私から見ればギョッとする考えもそう至るまでの道のりを知りたいと思いました。
見えてきたのは、多くの人が試行錯誤し、またそれによって傷ついた心にオロオロとする様子でした。だからこそ黙って心を押し込める人、より辛く苦難を強いられる人もおりました。最も多いのはこのゾーンの人々だと私は思うのです。その人たちは「まずは、どんな選択でもいいから心置きなく話せるように、そして手伝いあい支え合うには。一緒に考えていこうよ。」と。変化していきました。

そんな中で、強い使命感と自信と体力があれば、自分の考えを妨げるもっとも辛辣な意見と戦い続ける人たちも居ます。被曝を心配する、被曝を安全とする、考えは違えどどちらも自分らを困難に向かわせる敵が居ると思っています。それが著名なリーダーであれば、先頭を行くその様子は取り上げられ、まるで全ての人がそうしているように映ります。たいして人数を占めていない「トンデモない人の起こす問題」がクローズアップされ改善から遠くなります。

そして、さらにコミュニケーションはややこしく難しくなり、困難な現場ほど体力がないんで(日々に手一杯)口を閉ざして流れに身をまかせるしかありません。

もう、こうなってくると困難は放射性物質ではなく、コミュニケーションです。放射性物質がきっかけで始まりましたが、これらの困難の仕組みは、原発事故以前から繰り返されてきたものです。

社会というのは、誰もが同じ考えにならないと叶わないのだろうか。そうではないはずです。なのに、多くの人は自分と違う考えの人がいるから邪魔をされ、困難があると思っています。だから、他の考えを倒さなくてはならない。今の社会がそうなっているかもしれませんが、本当は、未来の子どもたちのために残すのは「考えが違っても叶えるには」を追求し始めることだと私は思います。どんな大きなアクシデントがあっても、コミュニケーションで困難の大部分を減らせる。アイデアで乗り越えることができる。人間の知恵と全ての力は幸せに生きるためにあります。

たくさんのことを修正していかないと、そんなふうに考えられないかもしれません。ここに細かくは書きませんが、わたしはこれからも描き考えていきます。

人は煽っても叱っても変わりません。自分の中から湧き上がり納得して選択して生きるのです。いつも必ず決断は自分です。これは一見そうは見えなくても事実です。そうならば、どこに何を要求するのか、お願いするのか、そして影響されるかされないのか、整理していけます。それをしないとずっと苦しい。

全ての大人が乗り越える全てのまず一歩は自分を超えるのだと、私は思っています。


【テキストはあかいつぶつぶの絵について2017年11月13日追記した部分を抜粋して手を加えました】

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