今の世の中では気づかれてない部分の担当
人というのは担当というか適任があって、それはそれは想像もつかないほど多種多様です。
「普通に」「人並みに」せめて、と目指しますが、それは不自然な気がします。
友人が12月に亡くなりましたが、彼は多種多様な担当のうち、今の世の中では気づかれてない部分の担当でした。
出会いは19の時で、言いがかりのような言葉に悲しくなって涙目でライブハウスを飛び出しました。
そんな風なので、いつしか叱り飛ばすようになり、大酒を共に飲み「しょうがないけど憎めない人」のポジションに。
けれど、よく観察していると彼はそんなにしょうがなくないというか、彼はすごく自然なのではと思うようになりました。
日本に来てたアフリカのミュージシャンをエージェントから匿って問題になりました。
「あいつがここに居りたいって言うもんで、おりゃええがやって言ったんだわ。」
長居したようだからミュージシャンはのびのび暮らしたでしょう。
レストランをやっていた時、食事に行ったらギターを持って大声で歌い席を離れませんでした。
連れとは話もできませんでしたが、嬉しかったんでしょう。
皆口を揃えて彼に困ったというけれど、それでも好きで呼ばれれば集まる人が絶えませんでした。
私は、途中からはっきりとその都度意思を彼に伝えていたので何も困りませんでした。
何も困らないどころか、辛い時によく助けてももらいました。
「いつでもこいよ、ええか、俺はここにおるでな」
普通にできることができない、そう思われていた節もあったけどそうでもないと思います。
普通できないことがいっぱいできた人だったね。
「そのままでいいと私は思うよ。とにかく歌ってればいいんじゃない?」って言えてて良かったと思います。
また会って飲むのが楽しみです。
さぞかしのびのびと歌い飲んでいることでしょう。
「ミサト、こっちもなかなかええぞ。俺はここにおるでな」と言うておるのが聞こえるようです。
ますますあの世はたのしそうです。
十年ぐらい前だったでしょうか、
彼の店のオープンに、大変有名なドラマーと歌うたいが駆けつけておりまして例のごとく彼は酔っ払って暴れだしました。
まあまあな騒ぎで、私は止めに入りましたが相手がいるわけでなく怪我しそうだったので離れてました。
もわぁっと場の雰囲気が悪くなりました。
先の有名ミュージシャン二人は、その間視線も向けずにこやかに談笑、頃合いを見てライブを始めました。
さっきまで暴れていた彼も、すっかりご機嫌でライブに参加。したんだったか、横で爆睡してたか。
とにかく最後は眠っておりました。
演奏を終え、ひとしきり飲んで記念撮影に応えミュージシャン二人は「彼をよろしく頼むね」とにこやかに帰って行きました。
私が連れて行った友人は騒動でワインをかぶったけど、記念になるとご機嫌でした。
誰が何に困ったんだろうか?
場はめちゃくちゃだったけど、二人のミュージシャンと友人に教えられました。
雰囲気を悪くするのは「こんなことになっちゃって」とオロオロしたり腹を立てたりする方なのでは。
そう思って、私もそんな風に考えたらビンゴでした。
私が彼に困らなかったのは彼がおとなしかったからではございません。
私からはもわっと場の雰囲気を悪くするようなものも出ませんし、一緒にいる時、何の問題もなかった。
助けてもらった方が多く、支えになったことは確かです。
今の私のものの考え方は、彼との交友の間にも育まれたことでこの体験があったから応用してみることも思いつきました。
たぶん彼は、現在は特殊でしょうがちょっと先を見越した部分の担当だったと思います。